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記事No : 22
タイトル GESORTING 155 気になる名前は「熱々拇指」
投稿日: 2008/06/20(Fri) 01:03:45
投稿者geso

[エーガ]
○内田けんじ『アフタースクール』(2008)
 前作『運命じゃない人』が傑作だったので期待してた最新作.久し振りにしっかり作り込んだ日本映画を観た思いで,ジグソーパズルが完成したときみたいに気持ちいい.脚本が緻密ゆえ,要となる役者たち――本作では大泉洋・佐々木蔵之介・堺雅人――には演技力が要求されるが,皆巧くこなしていたと思う.馬鹿映画ばかりが跋扈する今日び,作る方も観る方も頭を使わないといけない――けれどちゃんとエンタメになってる――こういう映画は貴重.

○ジェフ・フォイヤージーク『悪魔とダニエル・ジョンストン』(2006)
 伝説のシンガー-ソングライター(1961年生まれ)のドキュメンタリ.両親が敬虔なキリスト教原理主義者・兄も姉も生真面目な優等生という一家の末弟→幼い頃から変人的振舞い→長じて頭の病気 という図式は,別に珍しいものではない.こういう境遇の人はゴクツブシとして一生を終えたり,犯罪に走ることもあると思うが,ダニエルの場合は幸いにも音楽と絵の才能があった――やや特殊だし,今なお親がかりではあるけれど.楽曲や歌唱スタイルには確かにディランやジョン・レノンの影響が強いが,あの手の偽善的な音楽家たちよりもずっと直裁で好ましい.ギターやオルガン演奏の下手でなければ出せない味も良いが,何より魅力的なのはその無防備な歌声である.

[ゴホン]
 『蟹工船』がワーキング・プアの共感を得てまさかのベストセラーだって?何て時代だ... 「もはや戦後ではない.戦前だ」と書いたのは往年の真崎守だったか?

○泡坂妻夫『鬼子母像』(光文社文庫 2003.初版1998)
 非ミステリ系の短編集.久々に読んで,泡坂ってこんなに巧かったんだと改めて感心,また未読作を集めることに.手始めに『比翼』(光文社文庫 2003)をブックオフで購入,積ん読。

○瀧波ユカリ『臨死!!江古田ちゃん 3』(アフタヌーンKC 2008)
 衰えを知らぬ毒舌トークが小気味いいが,グサリ刺される人も結構いるかも.

○諸星『栞と紙魚子の百物語』(朝日新聞社 2008)
 どんどんギャグ漫画化が進行中.新キャラの使い魔「クダギツネ」が可愛い.

△スタンリィ・エリン『闇に踊れ!』(創元推理文庫 1993.原著1983)
 二人いる主人公の一方が激烈な人種差別発言を連発することから――そういうキャラ設定なんだから仕方ない――なかなか版元が決まらなかったという曰く付きのサスペンス長編.中盤から次第に盛り上がり最終章でクライマックスを迎えるものの結末は呆気なくてちょっと肩透かし,という構成には,山田正紀を思わせるものが...

△天野頌子『紳士のためのエステ入門』(ノン・ノベル 2008)
 警視庁幽霊係の4作目.他愛ないけど癖になるシリーズ.

○東陽片岡『うすバカ昭和ブルース』(青林工藝舎 2008)
 相変わらず汚物まみれの心安らぐお漫画だが,いきなりシュールな設定が出てきたりする――日本海に浮かぶ孤島の煮込み屋だとか――のが,たみゃらん.

 津原泰水は,時々技巧が鼻につくこともあるけれど,当代最も巧い小説家の一人だと思う.
 俺には文庫本の解説を先に読む悪癖があるが,津原がジョナサン・キャロル『パニックの手』(創元推理文庫 2006)と佐々木丸美『水に描かれた館』(創元推理文庫 2007)に寄せた解説を,たまたま続けて立ち読みした.
 キャロルの「カッコよさ」に決定的な影響を受けて小説家になる決意を固めたことや,努力や研鑽を重ねても至れない水準にある佐々木の天賦の才能に対する羨望と嫉妬を吐露したそれらの解説文が,意外にも直截で熱かったのが気になり,本文を読みたくなった.
 で,ブックオフを数店巡って収集.

○ジョナサン・キャロル『死者の書』(創元推理文庫 1988.原著1980)
 半ば近くまで読むと,本好きの子供だったら誰でも一度は捕らわれるであろう妄想がモチーフになっていることに気付くが,そこで読者を「馬鹿馬鹿しい」と見切らせることなく,引き続き懐かしい悪夢に引きずり込んでいく文章力が凄い.津原はこの技倆に憧れたのだろう.ホラーよりもファンタジー寄りだが,分類しても仕方ない.高水準のデビュー作.
○同『月の骨』(創元推理文庫 1989.原著1987)
 3作目であり,三部作の1作目らしいが,2作目と3作目は未入手.夢の世界が現実を侵犯するダーク・ファンタジーと言ってしまえば陳腐に聞こえるが,実際は一筋縄ではいかない手の込んだ小説.他の作品でもそうだが,喩えて言えば一作の中にハーレクイン・ロマンスとウィアード・テールズが同居しているかのような落差が読者に目眩をもたらす.それはジェットコースター的な感覚の落差というよりも,躁鬱病的な感情の落差だ.
◎『天使の牙から』(創元推理文庫 1995.原著1994)
 飛んで9作目.明るい状況から次第に不穏さが増し嫌ぁな感じになって残酷なクライマックスへとなだれ込む結構は既読作と共通するが,描写が巧みなので「またか」と思わされることはない.凡庸な小説には作者の分身しか登場しなくて退屈するが,キャロルの場合は全然タイプの違うキャラを多数登場させつつ,それぞれに感情移入させてしまう人物造形が見事.伊坂幸太郎(『死神の精度』)は恐らくこれを読んでると思う.筒井康隆(『ヘル』)は多分読んでない.
 今は『パニックの手』を読んでるところで,他に『黒いカクテル』と『蜘蛛の巣にキス』(すべて創元推理文庫)が積ん読.

○佐々木丸美『崖の館』(創元推理文庫 2006.初版1977)
 津原の解説は2作目に載っているが,三部作なので最初から全部読むことにする.
 この1作目は,確かに新本格推理の先駆という感じの「館もの」だが,『黒死館殺人事件』の少女小説版の趣もある.癖の強い少女趣味的文体で取っ付きにくかったが,読み進めるとこれは「趣味」なんて生易しいものではなく,少女主義とでも言うべき根っからの「体質」なのだと分かる.
○『水に描かれた館』(創元推理文庫 2007.初版1978)
 1作目より更に幻想味が増しているが,着地点はしっかりミステリ.この巧まざる?離れ業が津原に羨望を抱かせたのだろう.確かに類例を見ない作品世界ではある.
?『夢館』(創元推理文庫 2007.初版1980)
 3作目は,最もミステリから遠ざかった輪廻転生譚.筋金入りのリリシズムには敬意を表するが,ここまで来るとついて行けない...

○原宏一『姥捨てバス』(ベネッセ 1998)
◎同『爆破屋』(小学館 2001)
○同『こたつ』(ベネッセ 1998)
○同『穴』(実業之日本社 2003)
○同『極楽カンパニー』(幻冬舎 1998)
○同『暴走爺』(小学館文庫 2002)
 他に『ムボガ』(幻冬舎 2000)が積ん読,『ダイナマイト・ツアーズ』(祥伝社文庫 2008)を注文中.
 そういう訳で,ここんところキャロルと原ばかり読んでいるのだった.
 両者を較べてもしょうがない――というか,キャロルと比較されちゃ大概の作家は気の毒だ――けれど,「とんでもなく非現実的な状況に陥ったときの登場人物の対応の仕方」に注目して,欧米人キャラと日本人キャラを比較してみるのも,暇潰しにはいいと思う.ここでは省略するけど.
 『床下仙人』のスマッシュヒットのお陰で,今年に入ってから絶版になっていた旧作の一部がボチボチ再版されたみたいだが,それもまたすぐに姿を消してしまった.どれもこれも面白いのに,なんで売れないんだろう...
 ともかく本屋では殆ど見掛けないので,図書館にあれば借りて読み,アマゾン等で適価の古本を見付けたら買うことにした.

 ところで,今一番「痛い」漫画は中村珍の『羣青』(「モーニング2」連載中)かも知れない.途中から読み始めたのだが,嫌ぁな気分になりつつ目が離せない.単行本が出たら買ってしまうだろう.

[やはり1kgは切りたいところ]
 意外に売れてるらしいアスースのEee PC 4G-Xを購入.最安値のネットショップを選んだので,2GBのメモリと16GBのSDHCカードを買い足しても53,000円で済んだ.新モデルが出たらもっと値下がりする筈だが,日本版はいつ出るか分からないし,この辺で手を打ってよしとして,入手した.
 お手軽価格だけあって機能は最小限に絞られており,スペック的にも貧弱だから,ノートPCと呼ぶのはためらわれる――UMPC(ウルトラモバイルパソコン)というよく分からない分類もあるようだけど.
 結局,PDAとノートPCの間にあるニッチな商品というわけだが,高性能化とオールインワン化だけがモバイルの道ではないことを示した点では,評価できると思う.他社もボチボチ真似た商品を出し始めてるようだ.
 実際に使ってみて,これはカスタマイズ自体を楽しめるマニア向けのPCであり,初心者には向かないと思った.あまりいぢくって壊しては元も子もないけど,差しっぱなしのSDHCカードを内蔵HDとして認識させるとか,OS(Windows XP Home)を極力スリム化するといった「改造」は,いくつかやってみた...面白い.
 俺の場合は,外出先から自宅のパソコンを遠隔操作するためのインターフェイス,という使い方が主で――因みに遠隔操作ソフトにはCoolGate(魔法のUSBスティック)を使用――街なかでの無線LAN接続にはワイヤレスゲート(ヨドバシカメラ・オリジナルプラン.月額380円ポッキリ)を利用している.なかなか軽快.

2008.06.20 GESO


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