タイトル | : GESORTING 148 再開 |
記事No | : 1 |
投稿日 | : 2008/01/22(Tue) 22:20:24 |
投稿者 | : geso |
[ご挨拶] 今更なんですけど,あけおめことよろです. 漸くアラシが去った...訳じゃなくて,自衛策としてシェルターを作ったというところでしょうか. 年も変わったことだし,4箇月ぶりに再開します. この間の出来事はいろんなメールに分散して書いたので,なるべく重複しないように書きますが,言いたいことは重複しても書いちゃうでしょう. 昨年9月頃まで遡りますが,追加や削除もあるので,時系列的にはワヤです.
[本のことだけ] ○武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』・『同 2』(2007 洋泉社) 著者の本を読むのは『「リサイクル」してはいけない』(青春出版社 2000)以来久しぶり. 旧著と較べると,地球温暖化やダイオキシンに関する見解に変化が見られるが,それは新しい情報とその分析に基づくもので,論点自体にブレはない. 内容はタイトルが示すとおりで,読むほどに怒り・諦めといったネガティヴな感情に駆られるが,「循環型社会」とか「持続可能な開発」といったオタメゴカシの「嘘」に騙されないためには,これを読んで現実を直視すべきじゃないかな. 「まずは「事実」から「解析」をするだけだ。最初に結論があって、それにあわせて自分に都合のよいことだけを事実にするなら、何も勉強せず、何も読まないほうがよい。」(2より)というのは,科学者に求められる基本的スタンスだろうけど,こと環境問題に関しては,未だにこう言わざるを得ない状況らしい.
○山田正紀『白の協奏曲』(双葉社 2007) ○同『私を猫と呼ばないで』(小学館 2007) 予告されてた本がなかなか出ないまま,ここんとこ意外な作品のリリースが続く正紀様. 『白』は,1978年「小説推理」に前後編で掲載された幻の長編.やっと読めた.『謀殺のチェスゲーム』に代表される正紀流冒険小説のファンであれば,楽しめるはず. 『猫』は「月刊 遊歩人」に連載された1作20枚程度の短編からのセレクション.恋愛の機微を描いた作品が多く,サラリと読めるけど,この短さで余韻を残せる職人芸と,老成を感じさせない軽さが,持ち味.
○荒木一郎『ありんこアフター・ダーク』(河出書房新社 1984)長編小説 ○同『後ろ向きのジョーカー』(新潮社 1997)長編小説 △同『雨の日にはプッシィ・ブルースを』(河出書房新社 1983)短編小説集 △同『さよならがいいたくて』(河出文庫 1987)短編小説集 △同『シャワールームの女』(徳間文庫 1986.初版1982) 長編小説 ×同『こんな女なら最高』(K.Kベストセラーズ 1982)エッセイ集 ×同『荒木一郎の男女学入門』(講談社 1984)エッセイ集 ×同『恋のマジック』(現代出版 1985)トークエッセイ集 荒木の単行本/文庫化された小説5冊を読破.それ以外の著作は,殆どがエッセイ集と,カードマジック――近年の彼はマジシャンとしての活動の方が多いらしい――の本だ. 小説はなかなか達者で,ミステリを主軸にいろんなジャンルに挑戦しているが,1冊だけ選ぶなら,非ミステリの自伝的青春ジャズ小説『ありんこアフター・ダーク』. これは,五木寛之に酷評されたという――実際の経緯は知らないが,縄張りを荒らされたと思ったのかも――直木賞候補作品.1962年〜1964年頃の渋谷を舞台にした傑作.なんで映画化されなかったんだろう. この作品も含めて,荒木の小説には実名がバンバン出てきて,虚実ないまぜの生々しさがある. 一方,エッセイ集はいずれも「俺様」すぎる内容で,共感できる部分は殆どない.「いい気なもんだ」と感じる程度で,あまりお薦めできない. あと,どのエッセイ集だったか忘れたが,伊藤一葉――懐かしいっすね.「この件について何かご質問はございませんか?」――を,マジシャンとして低劣だとこきおろしている文章があって,これは都筑道夫と共通する見解であった.まぁ,故人の悪口を言ってもしようがないけど,エッセイが書かれた当時,一葉さんは売れっ子だったんでしょう.
○天野頌子『少女漫画家が猫を飼う理由』(祥伝社ノン・ノベル 2007) ○日本橋ヨヲコ『少女ファイト』3(講談社イブニングKC 2007) △とりのなん子『とりぱん』4(講談社ワイドKC 2007) ?三宅乱丈『イムリ』1〜2(エンターブレイン 2007) ○『金魚屋古書店』6(小学館 2007) ○吉田秋生『海街diary 1 蝉時雨のやむ頃』(小学館 2007) ○一条ゆかり『プライド』8(集英社 2007) ○宇仁田 ゆみ『うさぎドロップ』3(Feelコミックス 2007) ○萩尾望都『山へ行く シリーズ ここではない☆どこか 1』(小学館 2007) いずれもシリーズもの.○のものは,ずっと続いて欲しい.
完結したシリーズものも結構読了. ◎森秀樹『墨攻』1〜8(小学館文庫 2000.初版1993) 酒見賢一の小説を漫画化.1〜4巻までは脚本・久保田千太郎が間に入り原作に七割方忠実な内容となっているが,5巻以降は,ほぼ森秀樹のオリジナルっぽい. 全盛期の白土三平が古代中国ものを描いていたらかくや,と思われる筆致で,個人的には苦手に属する絵柄なのに,そんなことは全然気にならなくなる無茶苦茶な面白さ. 8巻に出て来る人とも獣ともつかぬ「山かい」――「かい」の字が出ない...けもの編に「軍」だ――なんて,モロ水木キャラだ. ○水樹和佳子『イティハーサ』1〜7(ハヤカワ文庫版 2000) 遅ればせながら.宗教臭さを敬遠してスルーするのは勿体ない. ◎萩尾望都『バルバラ異界』1〜4(小学館 2004) ベテランなのにストーリー的破綻も恐れずに勢いで描いてるところが凄い. ◎花輪和一『刑務所の前』3(小学館 2007) そう言えばこれは『刑務所の中』の姉妹編というか,前日譚だったんだよね,元々は...こんなに翔んだ作品になるとは思わなんだ.
○松井今朝子『家、家にあらず』(集英社文庫 2007.初版2005) ◎同『仲蔵狂乱』(講談社文庫 2001.初版1998) ○同『東洲しゃらくさし』(PHP文庫 .初版1997) ○同『幕末あどれさん』(PHP文庫 2004.初版1998) ?同『大江戸亀奉行日記』(ハルキ文庫 2004) ○同『辰巳家疑獄』(ちくま文庫 2007.初版2003) 近作2冊を除いて読破.当然ハズレはないが,『大江戸亀奉行日記』みたいなアホな作品も書く人だったんで,嬉しい.
◎酒見賢一『後宮小説』(新潮文庫 1989.初版1987) ○同『周公旦』(文春文庫 2003.初版1999) 『後宮小説』は,チラ見したアニメの印象が悪かった――子供向けにアレンジしたため台無しになってた――ので敬遠してたのだが,遅ればせながら読んでみたら,傑作じゃないっすか. デビュー作でこんなに人を食った中国偽史をヌケヌケとでっち上げるなんて,大物じゃん.
○クリストファー・プリースト『奇術師』(ハヤカワ文庫 2004) 映画版(『プレステージ』(2006))も観てみたい.
○折原一『黒い森』(祥伝社 2007) 表側からも裏側からも読める本で,真ん中(解決編)が袋綴じ――いまどきこんな遊びを仕掛けてくれるだけで嬉しい.今回は,初期の作風を思い出させるシンプルな叙述ミステリ. この作者の場合,文章の下手さ加減さえ計算された偽装と思われ,「読者ヲ騙スタメナラ何デモスル」という一貫した姿勢には頭が下がる.
×笠井潔『オイディプス症候群』(カッパノベルス 2006.初版2002) 長大なのは構わないが,不毛な――と言っていいよ,全然――哲学論議の場面が多すぎる.そんなの評論集で書きゃいいのに.
△連城三紀彦『人間動物園』(双葉文庫 2005.初版2002) もっと読みたい作家だが,このお話はちょっと無理めかな.
◎竹熊健太郎『篦棒な人々』(河出文庫 2007.初版1998) 康芳夫・石原豪人・川内康範・糸井貫二ことダダカンという,怪人4人へのインタビュー集.べらぼうに面白い. 2007年10月時点,ダダカンは健在で(87歳),今やミクシィにコミュもあるという.
○篠田正浩/齋藤愼爾編『阿久悠のいた時代』(柏書房 2007) ○阿久悠『生きっぱなしの記』(日経ビジネス文庫 2007.初版2004) ○同『歌謡曲の時代 ―歌もよう人もよう―』(新潮文庫 2007.初版2004) 去年逝った阿久悠は,俺のイメージでは天才というよりも鬼才で,並外れた観察力と直観の人である.怒りを露わにするタイプではなかったようだが,遺言を思わせる晩年の諸エッセイを読むと,今の日本人に対して静かに怒り狂っていたことが分かる. 『阿久悠のいた時代』は,塚本邦雄のエッセイだけでも読むに価するし,他の2冊も,正直,久々にタメになる本だと思った.引用したい箇所は,多すぎるので省略.
○『黒沢進著作集』(ウルトラ・ヴァイヴ 2007) 唯一の「日本ロック史家」だった彼も,去年急逝した. 80年代前半にダビングしてもらった大量のB級GSのカセット――選曲は黒沢氏本人――は俺の宝物.
△伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮社 2007) 大統領暗殺――日本が大統領制になってるという設定ね――の濡れ衣を着せられた青年の逃亡劇. いかにも映画的なカットバックを多用した娯楽大作で,詰まらない訳はないのだが,『魔王』を読んだときと同様の不満を感じる――そんなに「フィクション」であることを強調しなくてもいいのに.
○戸川昌子『大いなる幻影/猟人日記』(講談社大衆文学館 1997.初版1962・1963) ○同『火の接吻』(扶桑社文庫 2000.初版1984) レコードは聴いてたが,読むのは初めての戸川昌子.最初はリズムが合わなかったけど,段々良くなる法華の太鼓で,大いに感心. 『大いなる幻影/猟人日記』は,乱歩や山風を想起させる探偵小説的味わいだが,『火の接吻』は――20年も後の作品だから当然かもだし,これらの間に書かれた作品はこれから読みつつあるのだが――新本格の先駆みたいな傑作.いずれにせよ,若造にはとても書けない濃ゆーい本格推理. 詰まらん音楽酒場なんかやめて,小説の世界に帰って来て欲しい.
[夢の商品] 起きてすぐに夢に見たものをメモしようとすると,ひどく疲れる.しかも,頑張って残したメモを後で読み返しても,何のことやら殆ど思い出せない... 例えば,昨年9/18朝のメモ: 「i-Ped.小児愛好家専用電子端末」――かなりおぞましい商品だったという記憶のみ残ってる.
ガブリエル・タルド『模倣の法則』(河出書房新社)が読みたいんだけど,定価6,090円はちょっとなぁ...と思ってたら,複数の図書館にあることが判明.早速文京区立図書館に予約した.
2008.01.22 GESO
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