嵐の中を
ほぼ無言で駆け抜けるスポーツ・カー
夕暮れが迫りつつあるのだ
路上に
無惨なカレンダーの死骸
割れたネオンランプ
嵐の表面を
稲妻が伝って行く

100Vの恋
200Vの恋
工業用3200Vの恋
誰が一番しびれたか
黒こげで
アルコールの中に漂っている
美女と野獣の標本

水中花
街に嵐が貼り付けられている
週末の恋と
終末の恋と
路面を転がる
重厚なコーラの缶
自転車の金属的な味と
暴風雨の中
踊る
女の胸

湿気の充満した
電話ボックスで
水たまりのテレフォン・カードが
17時55分の光景にとけ出している
嵐の中の喜劇を
照明過多な夕暮れの自動車が照らし出す
濡れた色の鴉がカア
××ホテル主催
屋上ビアガーデン
雨天決行 そりゃ結構
18時より
ただし 嵐の中でとは書いていない

ウェイターとウェイトレスの
アルバイトの諸君は
立ち尽くしたまま
雷鳴をバックに会話
酸性雨に
街がくすぶっている
夕闇の電光掲示板が
珍しく
風光の美化に参列
風雨の強化にも参列

雨の夕暮れの
突然変異バーガーが
アスファルトで涼んで
少女が奇声を張り上げて
少年が罵声を張り上げて
有り難いことに
ここで光景は
昏くなって行く