黄金の船を造ろう、黄金の戦艦を造ろうと呼ばう声がする。重苦しい夜の風に乗って無数の声が往来する。昏い星々が見おろす石の広場を、僕は恋人とともに歩いている。僕たちはひどく疲れている。世界のように街は昏く蝋燭をとぼした酒場では赤い顔をした男達が、口々に国の衰退を嘆いている。この国は荒れ果ててしまった。ひどく寂れてしまった。工場は崩れて犬の棲処となり、港では廃船が塩辛い波に洗われている。海の向こうでは、黒い軍船が犇めき、やがてこの国に襲いかかるだろう。それから話は取り留めもなく、僕らも昏い酩酊の淵にさしかかる頃には、誰からともなく歌い始める例の唄。すでに亡びた王を悼む唄。美く哀切な愛国の歌。合唱の坩堝から抜け出して、戻り着く部屋は約束のようにたよりなく、夜明けの、球根のように蒼ざめたシーツの上で、僕は冷たい魚のように恋人を抱きしめる。黄金の戦艦を造ろう。黄金の戦艦を建造して、暗黒の世界を航海しよう。