兎の眼の中の虹を追って
アリスは何処に行った
梨の樹の茂る夢の村の
珍しい客人として迎えられた
それとも塩の無い海を
梟の舟で渡ったのか
乳房は大きく
恥部は小さい
アリスの突き出す短靴の足に
蟻は何匹踏みつぶされた
嵐は何度吹き過ぎた
それでも危なっかしく時は巡り
リアルな庵に居座るアリス
庵の囲炉裏でいぶされる鮎
米寿のアリスは隠居暮し
ベージュの絨毯にふんぞり返り
えらくいばって色気が無いが
客には栗御飯をふるまってくれる
明治四年に伊藤博文は
水母に化けて気違い帽子屋に訊ねる
「済んでしまったことは仕方無いが
千両箱
味の素
永遠」
帽子屋答えて曰く
「半導体アリス単結晶して
いまさら間に合う訳でも無いが
胡麻塩
産業革命」
材料は多いが
役に立たない鏡のミルク
聖水を用いて米をとぎ
幾つか無意味な呪文を唱えれば
兎の眼の中で虹が光り
虹の橋を渡れば小さな庵が見える
すなわち逆転とは何だろう
結局見えない眼の中の塵の中の
あの小さな幻の村
アリス
栗御飯