ひしゃく氏よ
僕はあなたのことを全く知らない
ゆうべは旗雲のなびく下
灰の街を寒暖計をもって
僕はあなたの体温を測ろうとした
他人の庭に迷い込んで
番犬にひどくくるぶしを噛まれた
笑い事ではない
その傷口にマヨネーズを塗って
ひしゃく氏よ
僕は夕食のてんぷらを食べた
これは何かの天啓ではないか
あなたがしたという風鈴体験の
これは真面目なパロディなのだよ
だから今朝は宿酔いの頭を抱えて
近くの海に捨てに行った
突堤の下の波間にはたくさんの頭が浮かび
辺りには西瓜ばかりがたむろしていた
帰ってみれば既に革命は始まって
偉大なる無能の神
すなわちひしゃく氏よ
あなたの銅像は引き倒されて
周囲で野良犬が昼寝していた
それ以来ひしゃく氏よ
僕は何故かくしゃみが止まらない
ラジオの天気予報によると
明日もまた旗雲が流れるらしい
だからひしゃく氏よ
僕も明日は馬蹄型磁石をもって
未来に向かうデモ隊の列の
レミングの行進に加わろうと思うのだ