新しい、塔の柱の建立に、縄文の都は華やいでいた。一日夢を追いかけて山野を跋渉し、跋渉に疲れた少年は縁石に腰を下ろして瞑目していた。紅殻色の夕陽が樹々の梢の彼方に去っても、都の騒擾は止むことを知らなかった。漁の水夫らは目指すだろう、高々と掲げられた瀝青の灯を。巫師はえびづるの縄を足首に結び、晴れやかに飛び降りるだろう恍惚の幻視へと。わにざめも群雲を呼ぶ剣も、まだ至らないこの新世界に。少年の夢が、原子や宇宙、愛と時間の終焉にまで辿り着く前に。焚き火は燃え上がれよ、夜明けも知らずに。夢は深く沈めよ、終わり無きように。そのように。少年は深い眠りに落ちていた。縄文の都は深い歓喜に酔い痴れていた。少年の胸に抱えられた胴乱に採集されたものは、球根、星屑、化石、そして昏い宝石のような虫達。時間と空間の唐草縄文の、二重の螺旋を双方向に辿り、複製を続ける生命の不滅。漆を塗られた土器には、蜜の味の酒。豊穣の乳のように燃えあがる炎は、縄文の都の永遠を火の鳥のように、火の鳥のように祝福していた。終わり無き宴。終わり無き宴の終わり。一つの文明が、一握りの灰となって忘却の水底に沈んだ頃、夕暮の風に揺り起こされた少年は、黄昏の物憂い残照の中で、夢を見ていたと呟いた。