またある日は
首の無い馬にまたがって
夏の終わりの闇を行き
紫野を行き標野を行き
希望ヶ丘団地の駐車場に立てば
二階のベランダから身を乗り出して
ヴィナス達が一斉に布団を叩く
そのリズムの
エロティカ
アルカディア
記憶のようなものと連れだって
山積みされた疑問符の山の
その山に行きて行き悩む
この道行の無意味さ
では
次亜永遠の東雲の向こうまで
罪人達が家具を作っている
建物を囲む高いたかい塀の陰で
苔を集めているエスキモーの一団に加わり
桃蟹の這う土地を横切り
人魚の交尾と産卵を眺め
暖かい氷山の麓に眠り
あるいは寒天の川を下って
やがてはエスキモーの群れも消え
首の無い馬の脚のままに
けじめもなく続く道行の
「人生の薮入」とはこんな気分だろうか
旅の終わりの春の岬まで
坦々と連なる街道の傍ら
壊れた樽を目の前にして
デュオゲニスとドヴェネックが口論している
風景は
見えない