夏の煌めく変光星が沈み
土星の環を巡る瞳が目覚める頃
ひまわりのうなだれる頚のあたりで
ふるえる微風とともに
錆びてゆく数々の楽器がある
演奏家たちはどこかに去り
何かが終わりかけた明るい虚しさのなかで
見上げられるものがあるなら
見上げきれない空の深みを
渡る鳥
赤蜻蛉
それから少女の水兵服の内側で
色あせてゆく肌の色を
郊外バスの軋みのなかで
垣間みる日も近い
やがて空は深さを増し
全ては遠のいて行くだろう
澄んだ水の満ちてくる
秋の夜を飾る細いほそい月の
迷光に照らされた家々の屋根に
隠された季節の記号に触れ
伴奏を無くした恋唄のように
風は裸の梢を渡り
やがて来るべき季節のために
町は不安な透明感に満たされる