バケツを叩きたくなるような朝
日々の約束を麗らかに忘却して
自転車は風で飾られ
白い一筋の声になる
見当違いに曲がった道の
海棠の花咲く垣根を潜り
明日の見知らぬ馬の首を締め
病原菌の倍陽気になる
晩春は絶えず寄せる緑の波
無い知恵を絞って進化する
鶏も鳴かない東の国の
不義理な時候の挨拶
袋小路を嘆くより
新しい酒を醸すべく
雑草の原を颯爽と駆け抜け
明朗な迷路にほのぼのと迷う
保障にならない日々の標の

猫目石
眼の無い夜の鴉たちの
影も今は見えない
炎天の匂う牧草地
馬もいる天に至る道のそこここ
また咲ける朝顔の紫
バベルの塔の昔の話は
良かれ悪しかれ疲れ果て
産んで増やして地に満ちた
現世の徳はまたしても
華々しく世界を結ぶ
晴れて結ばれた空の上の
上の空の神の馬面
道でのたうつ暢気なみみず
舗装された駐車場の
大きな栗の樹の下で
ファシストたちがラジオ体操している