遥かなる聖都を望む
壊れかけた望遠鏡
繁栄を反映する摩天楼の
窓に反射して無限等割される
格子状の未来に向かって
クロスワードパズルを解かんとする
現実逃避の口紅を抱いて
泣き笑いする潜水夫たちの
捉え所も無く
知る人も無い現実のバランスシートに
累積した赤字は消えそうも無い
桃ノ夭々タル
束ノ間ノ浮遊感覚
溺死寸前の雲の間にまに
飛行する白昼
モレインの丘を越えて
例えば置物の狸の
徳利に巣を作るヤドリコバチの
意味無きコピーと反復
模倣の愛
種の起源の暗さを伝えるべく
今いる場所より遠い墓地へ
類は大声で友を呼ぶ
桃ノ夭々タル
束ノ間ノ酩酊感覚
ズームアップされる水公園の
梨の木に輝く星座が宿るまで
溺死者と鳩は楽しげに踊る
透き通った酒を飲む
遂に壊れた望遠鏡の
世界は遠くまた近く
打ち寄せる夢の波に
酔い痴れる