蕗の花の咲く頃
鬼門の方角に向かう
高い松の樹を巡る土の道
乾いた旅人の顔をして
ひとを呼ぶように草木の名を唱え
淡い疑問符の輪の中で
些細な距離を越える
永遠は瞬間に過ぎないならば
天を泳ぐ巨大な魚の
美しくも虚しい名前は呼ばず
しばらくは柔らかい風を道連れに
遅い春の迷宮を巡る
夥しい記憶と幻想の街また街
呪いとも祝福ともつかない季節の
黄昏が空をにんじんの色に染めるまで