犬が鍋の中で何やら陰謀を練っているらしい気配が伝わってくるわたしは疲れ果てて金魚の水を舐めるあの
ちょっとそれは変なところで肛門の品種改良をしているメンデルの白衣を着た幽霊かしら
それともδのあたりからφに向かって流し目を配達する裸の郵便夫さん雨の日はつらい
机の上でホチキスの野郎が逆立ちをしている
わたしは回転する椅子の上で本当にあった恐いお話の本を少し囓ってから地球に向かって飛来する黄金の便器を撃ち落すべくどうしようかと思い悩みつつ
春から冬にかけて極端に細い樹が生えている村の共同墓地でバーベキューを焼くわたしは美しい
鍋の中でころされる犬は密室犯罪の犠牲者なのだろうかそれとも
脱毛クリームを塗りすぎた薔薇時計からしたたる液化時間の一周忌
マッチ箱の中で瀕死の蟹がうめいているのを知っていて百日紅の木に登りたがるわたしのいかがわしいのが機動隊を挑発している隙に
流行性赤ん坊が女子更衣室で大砲をならすのを合図にミヤマウミウシの大発生
蛍光灯の傘の下でわたしはちょっとたいくつなわいせつな紅茶を飲んで緑色になるそれは
水銀中毒の魚が滑り落ちる質屋の看板のような顔で
二十歳すぎてもわたしは本人に自信が持てない理由無く恥ずかしい中性子トイレの失語症
だからわたしは不当に平べったい猫をかわるがわる棒でひっぱたく
だからだからわたしは石油タンクの頂上で笑う石炭酸ナトリウムのような顔のわたしを煙にまいて尻切れトンボが一列になってジブラルタル海峡を渡る神話の崩壊に当たって油くさい水様駅の待合室でラムネの自動販売機が発狂するのを待っているという密告電話を真に受けて
薄暗い廊下に消火器みたいにしゃがみ込んでエルンストの花嫁の真似をしているわたしを許して
わたしの足の裏で風船になったり沢庵石になったりするこの星が憎い
洋服ダンスとは何のことだか知らないわたしだけれど
錆びた自転車に乗って電信柱を駆け登る猫とともに珈琲カップの中でよじれている毛むくじゃらの時計に会いにゆく花束と文化鍋を持って
それはわたしの永遠のシンボルだから
忘れないうちに時間が摩滅しないうちに焦っているわたしの上下左右でお面をつけた英霊がG線上の阿波踊り
それでもわたしは巡洋艦になりたいのだろうか
それでもわたしはカルチャー的失礼しちゃう文化鍋の入学式に出席するブーメランが好き
猫の瞳の淡いすき間から時を盗みとるために甘酸っぱい空の井戸で自転車をこぎながら急ぎながら
今でもわたしの頭は鋸のように切れる