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「おれの欠伸の口に飛び込んできた男
片手に握られていた忌まわしいサーベルの銀色の輝き」
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「僕をのみこんだ竜の 血管のように美しい体系」
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「おれは戸惑うほかはない
おれは人を殺めたこともないのに」
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「球形の迷宮をシムボルと逆方向に奔走しながら
水死人の肥満を感じてみる」
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「おれはいつものようにおとなしく草を食んでいただけなのだ」
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「知識ハ〈力〉デス
重要ナノハ〈プロセス〉デス」
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「僕の耳を聾するキセイ虫どものやかましいアドヴァイス
まず刺し殺すべきはこいつら!」
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「おれが殺されることは大した問題ではない
ただ まずいことに
おれは今 孕んでいるんだ」
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「十重二十重に絡み合うこの空間では
食道も産道も区別がつかない だが
ラバー・ソウルが溶け出していないところをみると
これは近道に違いない」
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「産道で蠕動している卵をあの男が見つけたら
おお大変なことだ!」
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「マズ……マズ破壊ヨリ始メヨ!」
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「おや あの声は
ひょっとしたら僕の仲間?」
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「だが それ以前に恐れていることがある
卵の中にいるもの――
それは本当におれの息子なのか?」
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「懐しい空耳を胸に留めおき
僕は暮色の胎内を突き進む」
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「こうして沼に没してゆく夕陽を眺めていると
おれはあの無謀な男のことも忘れてしまいそうだ
いつもと変わらぬ平穏な夜の訪れ」
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「僕の剣は絶対の隔離のための蛇
僕の剣は曙を覆う夜の緞帳を切り裂く呼び水」
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「おれの中の何かが突き刺され切り裂かれているのを感じる
だが苦痛なんてない」
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「僕の剣は絶対の隔離のための鐘
僕の剣は宵闇を隠す真昼のベールを引き裂く引き金」
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「途方もなく長いこと生きてきたおれの神経は
途方もなく薄っぺらな拡がりをもってしまったとみえる」
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「穴ト路地ニ染ミ入ル目ト頬
アレハ〈ゴリラ〉・増エル〈ブルドッグ〉」
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「非人称の声が寝言を言う
僕は隘路にさしかかったらしい 思い出すんだ
町並み外れた界隈を歩いて人並み外れた考えを抱いた
天啓の日!おや 何か動いている
あれは何だ?」
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「おお!とうとう見つけたらしい」
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「これはどう見ても巨大な卵だ
しかし 竜の卵はかくも理想的な白球だっただろうか?」
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「奴は卵の表面をコツコツ叩いたり
耳を押し当てたりしている様子だ
だが おれにはなす術もない
何よりも困ったことにおれは眠くなってきた」
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「僕は決意した
この卵が一つのシムボルであり僕に対する挑戦なのだとすれば
かち割って中を発くまでだ
まず破壊より始めよ!」
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「眠気がおれを蝕ばむ
この眠りが最後の眠りになるような予感がするのは
なぜだろう?」
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「僕は剣を大きく振り上げる
ふいに〈階級〉という言葉が浮かぶが理由は判らない」
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「おれは眠りつつある
ふいに〈墓〉という言葉が浮かぶ ああ
おれの墓碑銘は何と刻まれるのだろう?」
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「僕は満身の力をこめて卵に剣を振り下ろす!」
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「ディプロドクス
パラドクス
ココニ眠ル」
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「鏡」