器なす宵
夢に震えるゆびさきに
白刃のきらめきが走る
その眩しさが契機となる
受動態から切断された位置で
鼓動を激しく掻き乱す
死を布石とするべく
奔流に飛び込み
流れ着く場所は
鳥の鳴く国
裂くべき音と意味の樹に
闇呑みの徒花が芽吹く
その鮮かさが契機となる
不変の顔料を用いずに
多くの枝葉を塗り潰す
技巧の環状性を毀つべく
老いさらばえた巨木の根元に
新たな楔を打ち込むのだ
それから鳥たちを掴まえよ
飛び交う鳥たちを掴まえよ!
ああ まず根源から捨象するのだ
問いかける声は内部にも向い
いずれはサンプルの位置に留まるだろう
恐るべき疲弊を敢えて杖としよう
狂おしい探求者として
森の奥に入る
だが そこには既に老樹はない
切り株どころか
生えていたという痕跡すらないのだ
あるのは 単に地面に置かれた人工の低木群
鳥たちの姿も見えない ただ
気味悪いことに鳴き声だけはやかましいのだ
ああ この凍て付きそうな繭の夜
飢えた裸形の巡礼者として
彷徨い続けなければならぬのか?
決め込まれた目覚めもなく
いつまでも薄暗い
鳥の鳴く国を!