雨後の街はさしずめ珊瑚礁に満ちたパノラマだが
ときおり生きているみたいな錯覚をもたらすのだ
珊瑚虫の俺はその中をふらふらと泳ぎまわり
腐乱の夢に喰いつく
少しびくつきながら

喰いまわるうちに
昔の友人に出逢うこともある
「おやおや あなたもですか」
「おやおや そういうあなたも」
「それじゃあ」
「それじゃあ」
親愛の情は天気の頃ほどべとつかないから
むしろ気持良い

ふらふら ふらふら
当てもなく泳ぎまわる
いつかは俺もパノラマの一部となろうが
まあ それも良い
すべて時間の波まかせだ
おや
いつの間にか同じところに戻ったらしい

さっきの友人が
もう珊瑚礁になっている